ポストコロナ時代の就職活動 大学生と教員たちの終わりなきケモノ道
さらに、企業側ご担当者様がたも無理難題を仰います。この地域では最高の公立大学なのに昨年度は20人採用して15人辞めやがった次は壊れない奴連れてこいと。それは私たちではなく、あなたがたの問題なのでは? 喉元迄その言葉が出かかりますが、なにぶん相手様は地域で雇用を支える日本国内有数の企業の人事様ですから、1人でも多く採用していただくために土下座でも何でもしてでもご意向にそうようにいたします。助けてください。
そして、コロナになって、学生も私たちもオンラインでの授業、オンラインでのレポート提出、オンラインでの論文指導が多くなっていました。さすがに私の研究室はクラスター化に脅えながら実験機械転がして研究してましたが、研究生いるのに営業終了している教授も少なくなく、なんだかなと思います。一番いかれてるなと思ったのはその方面の研究者という触れ込みでやってきたはずなのに反ワクチンの旗手みたいになって鼻つまみ者になってた人でしたが、人間狂うといつでもそうなるのだと思うと悪くも言えません。結果として、まともに人と話したこともなければ、話したことをやり遂げる気概もない学生を量産してしまった。当たり前ですね、オンラインで授業して出席取って試験やっても、みんなオンラインで検索してそれっぽいこと書いてきたら単位を出さざるを得ないんですから。
企業様に訪問する学生たちが、着慣れないスーツを纏って出かける背中を見ると、はっきりと「学生の劣化」と「そうなってしまった私たちの駄目なオンライン授業の弊害」なんてのを認識させられることになります。確かに21歳22歳ぐらいの彼らが、社会人を相手に「御社の志望理由は」なんて話をするのも空虚だと言いつつも、でも世の中は空虚なのだからお世辞でもそういう取って付けた志望理由を臆面もなく堂々と言ってのける能力もまた必要だと思うのですよ。
会ったこともない人に自分を評価してもらい、雇ってもらうことの大変さは、大人になっても酷です。私も経験してはいますけれども、それは人として生きていく資質・能力の根幹にあるものですから。まだ能力も分からない若者を採る人事の側も真剣です。そういう真剣さを、オンラインでぬくぬくと授業してきた大学生に求めるのは実に難しい。頑張ってくれよと思いつつ、入室時に挨拶も満足にできない学生たちを見ると「ここからがスタートだ」と奮い立たせるのも辛いのです。
それでも、生きていかなければならない。戦わなければならない。そういう寒波のような世間で沈まずに働き口を見つけ自分の力で利益を上げられるような学生に一人でも多く仕上げるのが大学人の務めではなかったか。
しかし、今度はまともに喋れもしないような、膨大な大学の雑務をこなすのにあいつは役に立たないからと免除されるような教授たちが「いや、大学は研究のためにあり。教育は研究の次」と豪語しています。うーん。そう。
でも、その研究費も国からは満足に来ないようになって8年ぐらいですか、あなたがた研究のほうが大事だと言いながら、研究誌に載る論文を何本書いてましたっけね。そういうままならぬ状況を抱えながら、今日もクレームと事務作業を捌きつつ論文をゆっくり書いています。
文:茶渋凶授(ちゃしぶ・きょうじゅ)
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